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おとな旅 ゆとり旅 春を待つ“とっぱずれ”の町 銚子をめぐる旅 銚子市(千葉県)

水揚げ量日本一を誇る漁港を有し
白亜の犬吠埼いぬぼうざき灯台も名高い
海の町・千葉県銚子市。
「銚子電鉄」でのんびり途中下車しながら
関東の東の端、“とっぱずれ”の町をめぐってみました。

銚子 Choshi

「ほととぎす 銚子は国の とっぱずれ」
この句を詠んだのは、江戸時代後期の商人で、諸国を行脚し、句碑を遺した鈴木金兵衛とされています。
とっぱずれ。それは、関東平野の最東端に位置する銚子を形容する言葉として、いまもたびたび使われます。

銚子近海には大陸棚が広がり、沖合では黒潮(暖流)と親潮(寒流)がぶつかり合っています。
そこに、流域面積日本一の利根川が栄養分をたっぷり含んだ水を送り込んで…。
それは魚たちにとって、撒き餌をしたような環境。
さまざまな魚介類が水揚げされる銚子漁港は、10年以上も水揚げ量日本一を誇っています。

そんな海の町の玄関口「銚子」駅から、旅を始めました。

仲ノ町 Nakanocho

「銚子」の次の駅は「仲ノ町」。大きな醬油工場に囲まれて、電車を降りると醬油のいい香りが漂います。

隣接する車庫は、見学OK。入場は8:00~16:00、入場料150円(2022年3月現在、見学場所は制限されていますが、入場無料で列車撮影も可能です)。
鉄道ファンであれば途中下車をしたくなる駅ですね!

駅舎は大正時代の木造平屋建て。
平成28年、 県立銚子商業高校の生徒がクラウドファンディングで集めた資金で、老朽化の進んだ部分を修繕し、レトロ感を残しながらきれいな駅に生まれ変わりました。

犬吠 Inubou

「仲ノ町」から7つ目の駅、「犬吠」でも途中下車をしてみました。
この駅のたたずまいは、南欧風。ペインティングを施した白壁や、絵タイルの装飾が青空によく映えます。
犬吠埼はユーラシア大陸の最西端・ポルトガルの「ロカ岬」と友好関係にあるそうです。犬吠の駅舎はその縁から、ポルトガルの宮殿をイメージして建築されたといいます。

犬吠駅より東に向かって歩くと、15分ほどで「犬吠埼灯台」に到着しました。
この岬付近は、平地としては「日本一早い初日の出」を拝める場所としても有名です。

銚子付近の海は潮の流れが複雑な、海の難所。犬吠埼灯台は、船が安全に航行できるよう、この場所に140年以上にわたって立ち続けています。

その灯台の前には真っ白なポストが。
銚子の旅に欠かせない人気の記念撮影スポットになっているようです。

駅から西方の小高い丘の上には、「地球の丸く見える丘展望館」があります。
180度の視界をはるかに超える、330度の水平線!
実際に見ると「確かに地球は丸い…」と感じさせられました。

外川 Togawa

終点の「外川」は、三角屋根のレトロな木造駅舎。
待合室の木製のベンチや時刻表なども、昔の駅の雰囲気を伝えていて、「澪つくし」をはじめ、ドラマのロケにも使われてきました。

外川駅は高台にあり、坂を下りた海岸に外川漁港があります。
外川漁港は、いまの銚子漁港より歴史が古い港。かつては銚子沖で大量に獲れるイワシを干した「ほしか」が貴重な肥料として取引され、町を大いに潤わせたそうです。

外川漁港の北西方向の海岸には、約10kmにわたって続く荒々しい海食崖が。国の名勝および天然記念物に指定された「屏風ケ浦」です。
外川駅からは約4kmの距離。足に自信のある方は歩いてみてはいかがでしょう。

銚子のおみやげ

人気の銚子土産は、干物や練り製品などの水産加工物、ひしお、醬油…。
そして銚子発祥の「ぬれ煎餅」。
焼きたての煎餅を醬油に漬けているので、しっとりもちもち。その不思議な食感はクセになりそう。電子レンジでほんのり温めて食べてもいけます!

銚子電鉄もオリジナルのぬれ煎餅を販売。駅の売店で買えるほか、お取り寄せも可能です。
さらにスティックケーキ「MAKURAGI」や「電車に乗ってほしいも」(干し芋)など、楽しい菓子や食品がいろいろそろっています。

アクセス

JR総武線・特急「しおさい」
東京駅→銚子駅=106~117分
高速バス 銚子東京線(京成バス/千葉交通)旭ルート
東京駅八重洲口前→銚子駅=133~141分

旅の図書室

はかない一夜花と一夏の恋 「宵待草」を生んだ銚子の浜辺

哀愁を帯びたメロディーで、いまも歌い継がれる「宵待草」。
この歌の作詞者は、はかなげな風情の美人画で知られる竹久夢二です。
「宵待草」の詩は、ここ銚子の海辺での、一人の女性と夢二との出会いから生まれたものです。

夢二は27歳の夏、海鹿島あしかじま周辺にあった宿に逗留しました。
ある日、彼は犬吠埼に向かう松林の中で、日傘を差した浴衣姿のうら若き女性とすれ違います。彼女は、夢二が泊まっていた旅館の隣家の娘。やがて、二人が連れ立って散歩をする姿は近隣の人の目にもとまるようになりました。

しかし翌年、再びこの地を訪れた夢二は、彼女が遠くに嫁いだと知り、ひと夏の恋が終わったことを悟るのです。

「待てど暮せど来ぬ人を 宵待草のやるせなさ 今宵は月も出ぬそうな」
浜辺には「宵待草」を刻んだ「竹久夢二詩碑」が立ち、往時をしのばせています。
夢二の詩碑は「地球の丸く見える丘」のふれあい広場内でも見られます。

こちらが「地球の丸く見える丘」にある詩碑。

海鹿島のあたりは、その名のとおり明治中期までアシカやトドが生息していたそうです。
海岸付近に無数にある大小の岩礁が防波堤となるため、海水浴や磯遊びにも適し、夏は海水浴客でにぎわいます。

宵待草が咲く夏ではなく、あえてひと気の少ない春の海岸を訪ね、逢いたい人に逢えない哀しさ・切なさを感じ取る…。そんな旅もよいかもしれません。

漁業の盛んな銚子には、古くからウミガメ信仰があり、市内にはウミガメの供養塔「亀の子さま」が数多く確認されています。

海鹿島海水浴場から、南にある「君が浜」に向かって歩き始めたあたりでも、亀の子さまに出会えました。

海鹿島海水浴場の最寄り駅は、銚子電鉄の「海鹿島」。関東最東端の駅です。
上り電車(外川→銚子)では、「犬吠」の二つ先の駅になります。

駅から海岸までは徒歩約10分の距離です。

銚子電鉄は、古き良き時代の列車の雰囲気を楽しめるよう車内を改装し、夢二の美人画などを飾った「大正ロマン電車」を運行。
〝宵待草に触れる旅〟の行き帰りを盛り上げてくれます。

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