遊び心のある粋な暮らしを。季節や暮らしのモノ・コトをもっと楽しむための知恵・知識、アイデアを提案するエッセイです。
長く愛されてきた「スタンダード」なモノには
やはり長く愛されるだけの理由があります。
その魅力は、この新しい時代の暮らしの中でも燦きます!
秋も終盤にさしかかった11月、さまざまな地の恵みが旬を迎えます。甘みを増したホクホクの芋類、繊維がやわらかく育ったみずみずしい大根、さまざまな木の実もこの季節ならではの味わいです。
そして忘れてはならないのが葉物野菜。例えば春菊。春に花が咲くから「春菊」と呼ばれますが、野菜としての旬は11月あたりから始まります。
だから、この時季出回る露地物の春菊は、見るからに元気!です。
春菊を生のままサラダにしたり、バジルの代わりにジェノベーゼ風パスタソースを仕立てたり。近ごろは春菊の洋風メニューも人気です。
でも季節の味をしっかり味わいたいときは、「やっぱりスタンダードな“おひたし”でしょう」と、編集チームの意見がまとまりました。
秋は菊の季節。そこで春菊と、黄色が鮮やかな食用菊、さらに焼きシイタケも加えた「晩秋のおひたし」を作ってみました。
春菊はたっぷりのお湯でゆでるのがカギ。食用菊は、ゆで汁に酢を加えてサッと加熱するのが、色をキレイに仕上げるコツです。
三つの食材それぞれが栄養豊富で、おいしく食べながらいろんな栄養素が補えます。
ひたし汁は、だし:しょうゆ:みりん=12:1:1の割合に(これが、ひたし汁の“黄金比”のよう)。
なお食用菊が手に入らない方は、春菊と焼きシイタケの2品で作るおひたしをどうぞ。これもまた格別のおいしさですよ!
春菊に含まれるβカロテンは、油と一緒に摂取することで、体に吸収されやすくなります。だから揚げ物・炒め物に使うのもおススメです。
ということで、サクサクおいしい「春菊のかき揚げ」作りにも挑戦してみました。
春菊は葉を手でちぎって3~4㎝の食べやすい大きさに。水気を切ってからうっすら衣をつけて、180度ぐらいの油で揚げます。
コツは衣が厚くなりすぎないようにすること。大きさも小ぶりで、分厚くならないようにまとめて揚げることで、サックリ軽い食感に仕上がります。
春菊に桜エビまたはジャコを加えてもOKです。
ミネラル分の多い「雪塩」、もしくは海藻と海水のうま味が詰まった「藻塩」などをつけて、揚げたてのサクサク感をお楽しみください。
残った分は、食べる前にオーブントースターでカリッと焼いて召し上がれ。おうどんやそば、またかき揚げ丼(ご飯にかき揚げを載せ、丼つゆをかける)も美味ですよ!
本誌では今回、焼酎のお湯割りのアレンジとして、“金魚”と呼ばれる飲み方も紹介しています。
焼酎のお湯割りに大葉を1枚浸し、さらにタカノツメをプラス。金魚のような景色を眺めつつ、大葉の風味と、ピリッとした辛みが加わった、大人の味が楽しめます。
夏場はロックでもどうぞ。
《便箋・一筆箋》
《麻の衣類》
長野県の南西端に位置する根羽村の「黒地」という集落に立つ柿の木は、樹齢150年ほど。老木ながら、秋に多くの実をつける年もあります。傍らの草むした小屋、そして背後の深緑とのコントラストが見事で、近年は写真愛好家を中心に見物客が集まるようになりました。
この木は私有地内にあるので、訪れた人は少し離れた道路からその絵のような光景にレンズを向け、まぶたにも焼き付けています。