お城さんぽの基礎知識

 

近年、お城を巡る人が増えています。御城印や登城記念のスタンプ収集の楽しさにも後押しされていますが、インターネットなどできめ細かな情報が発信されるようになり、城ならではの魅力——刻まれてきた歴史や逸話、建造物や石垣のすばらしさなど——に、多くの人が興味を持つようになったということでしょう。
併せて、城下町の風情、名物の味や伝統工芸といったものにも関心が向けられるようになりました。また城巡りでは、よく歩かなければなりません。とても健康的だということも人気の要因でしょう。
今回は、お城さんぽが“もっと楽しくなる・面白くなる”基礎知識を、注目の「現存12天守」にふれながら紹介しましょう。

現存天守って何?

明治維新以前に築かれて今日に残る木造天守のことです。かつて天守はたくさんありましたが、焼失や倒壊、破却はきゃく(=取り壊すこと)などによって姿を消し、現在はわずかに12を数えるのみとなりました。これが現存12天守です。現存天守を守り伝える12の城を、北から順に紹介すると表のようになります。

城の名前と所在地

現存12天守の推定築造年は、松本城と犬山城は戦国時代末期、ほかは江戸時代とされています。また松本城、犬山城、彦根城、姫路城、松江城の5城の天守が国宝の指定を受けています。なお姫路城は1993(平成5)年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。

国宝天守を持つ5つの名城

松本城、犬山城、彦根城、姫路城、松江城
山城、平山城、平城とは?

山城、平山城、平城とは?

山城とは文字どおり、険しい山の上に、自然の地形を利用して築かれた城のこと。防御が堅く、難攻不落をうたわれる城が多いのが特徴です。現存12天守の城では、雲海に浮かぶ“天空の山城”として人気の備中松山城が典型です。
平山城は、平野の中に盛り上がる低山や丘陵を利用して築かれた城のこと。多くの城が該当し、現存12天守の城では、姫路城、松江城、丸亀城などが挙げられます。
また平城は、平山城よりもさらに平坦な場所、城下町の中心に築かれた城をいいます。現存12天守の城では松本城がそうです。山城 <備中松山城天守> 写真提供/岡山県観光連盟

曲輪(郭)、櫓とは?

城内散策ではそこかしこで、城郭の専門用語に遭遇します。その中でも曲輪と櫓の2つは基本のキ、ぜひ覚えておきましょう。
まず曲輪です。これは石垣や塀、堀などで区切られた区画、エリアのことです。郭とも書かれ、またまるもほぼ同じ意味です。天守や御殿などがある城の中枢ともいえる曲輪が本丸、本丸の次に重要な曲輪が二之丸となります。
次に櫓です。これはつまりは建造物のこと。用途や設置場所によって、太鼓櫓、月見櫓、すみ櫓、わたり櫓(=渡り廊下状のもの)というように呼ばれます。
ちなみに伊予国いよのくに松山城は、天守・小天守・隅櫓が渡櫓でつながれている見事な天守建造物群を形成しています。このような天守の形式を連立式天守といいます。

連立式天守 <松山城天守>
写真提供/松山観光コンベンション協会

望楼型天守と層塔型天守とは?

天守の構造(建築様式)から見た分類です。
簡単に言うと、望楼型とは、入母屋いりもや造りの建物の上に望楼(物見)を載せた様式で、一方層塔型とは、各階を規則的に(小さくしながら)積み上げていく様式です。
前者は、比較的古い時代の天守に多く見られるもので、現存12天守の城では、高知城天守などがそうです。また後者には宇和島城天守などがあります。

望楼型天守 <高知城天守>
望楼型天守 <高知城天守>
写真提供/公財 高知県観光コンベンション協会
層塔型天守 <宇和島城>
層塔型天守 <宇和島城>
写真提供/愛媛県観光物産協会

天守の独立式、複合式って何?

ほかの建造物との連携から見た天守形式です。大別すると、独立式、複合式、そして連結式、連立式があります。
独立式天守は、天守にほかの建造物が付属せず、単独でそびえ立っている形式です。現存12天守の城では弘前城天守などがそうです。 

独立式天守 <弘前城天守>写真提供/弘前市観光コンベンション協会

複合式天守は、天守に小天守や櫓が直接付属、つまりくっついている形式です。現存12天守の城では犬山城天守などがそうです。これが、直接に付属しているのではなく、渡櫓でつながれていると、連結式天守と呼ばれます。

複合式天守 <犬山城天守>写真提供/国宝犬山城

また連立式天守とは、大天守と複数の小天守ないし隅櫓を渡櫓でつなぎ、天守群を成している形式をいいます。天守群の内側に中庭ができるのが特徴で、現存12天守の城では姫路城天守、松山城天守がそうです。
なお、複合式と連結式の要素を備えた天守もあります。これは連結複合式天守とも呼ばれ、現存12天守の城では松本城天守がそうです。

石垣の技と美にも注目!

石垣の名城 <丸亀城>写真提供/公社 香川県観光協会

石垣が面白いというと、少しマニアックに思われる人もいるかもしれません。しかし一度、とくとご見学あれ!当時の築城技術を結集して造られ、風雪や危難に耐えて今日に残ってきた、そのたたずまいのすばらしさに、きっと感動を覚えるはずです。
現存12天守の城の石垣は、いずれ劣らず見応えがあります。讃岐の丸亀城は“石垣の名城”ともいわれています。
石の積み方にはさまざまな方法・種類があります。お城さんぽでは、次の3つを覚えておくとよいでしょう。

野面積みの天守台石垣 <丸岡城天守>写真提供/福井県観光連盟

まずは野面積のづらづみです。自然石をそのまま積み上げたもので、すき間は、小さな石を詰め込むなどしてふさぎます。野面積は初期の城郭に多く見られるもので、現存12天守の城では丸岡城天守台の野面積みなどが有名です。
2つ目は打込接うちこみはぎです。すき間を減らすため、自然石をそのまま使わず、接合面を打ち欠くなどして手を加えて積み上げるものです。
3つ目が切込接きりこみはぎです。石同士がぴったりと接するよう、石をきれいな方形に加工して積み上げるものです。

天守を眺めるときは、しゃちほこも!

鯱 <姫路城>写真提供/姫路市お城さんぽでは、双眼鏡や単眼鏡など、ズームして見ることができるツールがあると、細部まで観察することができてとても便利です。特に天守を見上げるときは、屋根の両端に置かれたしゃちほこ(鯱)を見逃さずに鑑賞したいものです。
それにしても、しゃちほことは何なのでしょう? 答えは、頭は竜(あるいは虎)に似、胴体は魚に似た想像上の生き物。火災が起きると口から水を吐き出すとされ、火除けの守り神なのです。
鯱 <姫路城>写真提供/姫路市
尾を反らした躍動的なフォルムは意匠としてもすばらしく、現存12天守ではありませんが、名古屋城の、重量が北鯱(雄)1272kg・南鯱(雌)1215kgという巨大な金のしゃちほこ(2代目)はあまりにも有名です。

さあ、健康づくりも兼ねて、全国各地のお城に出かけてみましょう!

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