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遊び心のある粋な暮らしを。季節や暮らしのモノ・コトをもっと楽しむための知恵・知識、アイデアを提案するエッセイです。
和かな風を入れて、季節の香りを感じたくなる春。
暮らしの中で親しんできた香りにも心を留めれば
より豊かに、香り立つ春が満喫できそうです。
海・山・里の多様な自然から得られる四季折々の食材。その素材の持ち味を生かすために発達した技術や道具、そして世界でも類を見ないほど多様な食器…。
日本で生まれ、受け継がれてきた「和食」の文化は、日本人の精神をあらわすものとして、2013年にユネスコの無形文化遺産に登録されました。
その和食の心髄ともいえるのが、かつお節や昆布などから引く、香り高くうま味たっぷりの「だし」です。
「風味」という言葉もあるように、人は「舌」ではなく「鼻」で味わっている、ともいわれます。
例えばかつおだし。あのおいしい香りは、「メタンチオール」などの揮発性成分に加え、ロースト香や燻煙香など、確認されているだけでも400種類にのぼる香り成分の集合体だそうです。
香りと同時に、かつお節からは「イノシン酸」などのうま味成分が溶け出して、料理の味の土台を作ります。
だしをしっかり利かせた料理は、塩分控えめでもおいしくいただけます。まただしのうま味を利用することで、動物性油脂に頼らない健康的な食生活を実現。
和食のそうしたメリットも、世界遺産認定の評価要素となったようです。
季節の「素材」の香りも、和食の魅力。三月は、はまぐりをはじめいろんな貝類が旬を迎えます。
はまぐりは「コハク酸」といううま味成分を多く含み、それ自体がだし素材にもなります。
本誌ではその風味が生き立つ「
味を「足し算」するのではなく、上手に「引き算」する、和食の良さを意識しながらつくりました。
三つ葉と柚子を、野に咲くたんぽぽに見立てて春らしく。まずはその彩りを目で見て楽しみ、立ちのぼる香りを楽しみ、それから味覚、さらには食感…。幾重にも春を味える一品になりました。
「醬油」もまた、和食の香りの代表格です。
穀物を発酵させて造る醬油は、その製造過程で味や香りを醸していきます。醬油の特徴的な香りは、甘いカラメル様の香り成分が主体ですが、バラの花、コーヒー、パイナップルなど意外な香り成分も含まれているそうです。
醬油ベースの甘辛ダレに漬けて焼く「照り焼き」は、特に香ばしさが際立つ調理法です。
鶏肉や魚、それに油揚げの照り焼きもおいしい…!
油揚げは、お湯をかけて油抜きをするのが一般的ですが、ここでちょっとひと手間。たっぷりのお湯に入れ、よく煮てしっかり油を抜くと、よりフワッとした食感になります。ぜひ試してみてください。
みりんと醬油で照り良く焼き上げたお揚げさんは、ツヤツヤ。その光沢がさらに食をそそります。
今回は余った油揚げでさらに一品、「お揚げさんの佃煮」を作ってみました。
味付けは照り焼きと同じく醬油+みりんに、砂糖やはちみつで甘みをプラス。“ご飯のお供”にぴったりの味付けにしました。
短冊に切った油揚げにショウガの千切りを加え、水を入れずに弱めの火で煮ます。照りが出てきたら火を止めて、出来上がり。
白ご飯に載せると、たまらないおいしさ。七味などをかけてピリ辛にすると、酒の肴にもなります。
《便箋・一筆箋》
《麻の衣類》
梅は老木になると、曲がりくねった枝が地面に接し、そこから根を出すことがあります。それを繰り返してできた樹形は、まさに地に臥した龍のよう。そうした姿の梅は、臥龍梅―「がりょうばい」または「がりゅうばい」と称されます。
大牟田市の古刹「