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ビタミン・ミネラルを賢く摂って体と心の健康をきちんと保とう!!

監修:佐藤 務 先生(稲毛病院 整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・在宅医療科・健康支援科部長)

ビタミンやミネラルが、人間の健康にとって不可欠なことは、今や小・中学生でも常識となっています。

しかし、なぜ必要なの?どのくらい必要なの? となると、私たち大人でも心もとないのが実情でしょう。そこで今回は、現代人にとって不足しがちといわれるビタミン・ミネラルの現状と、効率的な摂取の方法などについて、専門家にお聞きしてみました。

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ビタミンは「保健量」を積極的に摂る

よく現代人は栄養不足、特にビタミンやミネラルが不足しがちだといわれていますが、実際にはどうなのでしょう。


佐藤 ビタミンの摂取量を見る基準として所要量というのがあります。これは欠乏症を防ぐために最低限必要な量ということですが、厚生労働省によれば、今の一般的な日本人は、一応この所要量はクリアしているとされています。

しかし、ビタミンの摂取量というのは、体質や年齢、食生活の内容によって大きく変わってきますから、個々の方々が、実際に毎日どれぐらい摂取できているかとなると、わからない、調べようがない、というのが実態でしょうね。

それに毎日の必要量という観点からみても、性別、体格、遺伝性、お酒やたばこを嗜むかどうかなどなど、様々な要因によって変わってきますので、一律に所要量だけ摂れていればいいというものではありません。

むしろ健康を維持していくためには、代謝を正常化するための理想摂取量とされる「保健量」を、積極的に摂取していく必要があると思います。

食事内容の変化も、栄養不足の一因に?

佐藤 昔の日本人は、食事だけで保健量の栄養素が摂れていました。しかし、現代食では、所要量を摂るのがやっとというレベルです。例えば、昔は豆腐を食べるときには、一緒におからも食べるというように、大豆の栄養を丸ごと摂取していましたが、今は豆腐だけ食べて、栄養豊富なおからは食べなくなっている。主食のお米にしても、今は精米して白米の部分だけを食べていますが、昔は精米してでた糠で糠床をつくり、野菜を漬けこんで糠の栄養分もしっかり摂っていました。

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また現代食は、保存性や手軽さを求めて加工度が高まってきています。加工の度合いが高まるほど、栄養素が減少するという傾向にあるので、ますます日常の食生活では栄養が摂りにくくなっているといえるでしょうね。(図1)

無理なダイエットは要注意

極端な食事制限など、無理なダイエットも栄養不足になるといわれていますが。


佐藤 そうですね。ビタミンやミネラルには、人間の代謝機能を助ける働きがあって、そのひとつは体の細胞などをつくりだす新陳代謝、もうひとつは運動に関係するエネルギー代謝ですが、ビタミンやミネラルが不足すると、そういった機能もきちんと働かなくなります。痩せるためにカロリーを制限するのはいいとしても、同時にビタミンやミネラルの摂取量も減らしてしまうのでは、意味がありません。例えばビタミンは、カロリーを代謝するときに使われますが、カロリーが10あってビタミンが3しかなければ、カロリーも3しか使われません。残りの7のカロリーは、極端にいえば脂肪となって体内に残ってしまうわけです。これでは真のダイエットになりませんね。

一般的に高齢化とともに食が細くなっていきますが、これもビタミン不足の原因に?


佐藤 そうです。ダイエットの場合と同じように、食事全体が減ることでビタミンの摂取量も自然に減ってしまいますからね。特に外食や加工食品の利用が多い方、ダイエット中の方、年齢とともに食が細くなっている方は、意識してビタミンやミネラルを補給することが大切です。そのためには、サプリメントを利用するのも有効な手段のひとつです。それも、特定の1種類のビタミンだけを摂取するのではなく、いろんな種類のビタミンを万遍なく摂れる、マルチビタミンのサプリメントがおすすめですね。

例えば、ご高齢の女性の方の骨粗鬆症という病気が話題になるとき、よくミネラルのカルシウムが足りないといわれますが、ビタミンB6、B12、葉酸、C、D、Kなどのビタミンの不足も、骨粗鬆症の原因となることがわかっています。

サプリメントを利用するのもひとつの手といえますね?

佐藤 もちろんです。ただ、サプリメントがすべてを解決してくれるわけではありません。生活習慣病の方は、まずその原因となっている生活習慣を見直すことが基本ですね。普段の食事内容をチェックして、摂りすぎているカロリーや栄養を減らす。そして不足しているビタミンやミネラルをサプリメントで補って、栄養のバランスを整えることですね。食事の摂り方、運動の仕方、睡眠のとり方、精神のあり方などの生活習慣が、同時に整ってはじめてサプリメントの効果が実感できるわけです。

サプリメントの上手な摂り方

サプリメントにも基本的な摂り方があるとのことですが、どんなことに注意が必要なのでしょう。

佐藤 栄養を補給するには、まず栄養成分がどのような性質を持っているかを知ることが大切です。また、必要な栄養素は、スポーツや運動習慣の有無、仕事内容やストレスの状況などにより、個人差があります。同じ人でも、その日の調子により必要量も異なります。補給する際の優先順位は、下の図2のピラミッドの下段から積み上げていくのが良いでしょう。

図の第1段階は、基本となるベースサプリメントです。まずは食事からたんぱく質をしっかり摂りましょう。5大たんぱく源の、肉、魚、卵、乳製品、大豆製品のうち、毎食2種類以上食べる習慣をつけましょう。その上でビタミン・ミネラルを十分量摂取しましょう。そうすることで、脂質やビタミン、ミネラルのバランスを摂るのに有効です。

また、運動前の食事には、ビタミンB群とCを補給するとよいでしょう。ただし、運動せずにこれらの栄養素を摂りすぎると、腎臓に負担がかかりミネラル不足を招くこともあるので注意が必要です。

第1段階の栄養補給で新陳代謝が安定したら、次は第2段階のサプリメントで、健康度を高める栄養補給を実践していきます。もちろん朝食は必須。きのこや納豆やヨーグルトなどの発酵食品を毎食摂ると効果的です。

あとは、オプションのサプリメントとして、症状別に第3段階、第4段階の栄養素を補給していきます。(図2)

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50歳を過ぎたら心の健康づくりを

身体の代謝に加え、心の代謝も重要だとか。

佐藤 私は「精神代謝(メンタル・メタボリズム)」と呼んでいますが、要するに心の健康も大切だということ。一般的に、"体が健康になると、心も健康になる"といわれていますが、確かに体がよくなることでメンタルが安定する方もいます。しかし、逆に体がよくなってもメンタルが落ちてしまう人もいます。つまり体の代謝と心の代謝は別のものとして考える必要があります。体の代謝、つまり新陳代謝のピークは20代ですが、一方精神代謝のピークは60代といわれています。ということは、人間は体の維持や種の保存のためだけではなく、心のために生きる動物といえるんですね。

人間60歳を過ぎれば、もう身体能力が高まることはないので、心の健康づくりが大切になるわけです。だから50歳を過ぎた人は、体の代謝の材料だけではなく、心のためのビタミンやミネラルも摂る必要があるのです。それは精神的、シンボリックな意味だけでなく、物理的に人間の心にとって、さまざまな栄養素が大切な役割を果たしてくれるからです。

心の健康づくりのためにも、マルチサプリメントが役に立つ?

佐藤 その通りです。ビタミン・ミネラルは、体の代謝だけでなく心の代謝にも、どちらにも必要な栄養素ですね。

炭水化物、脂肪、たんぱく質の3大栄養素は、体内での変換効率が良い。脂肪は糖分にもなるし、糖分は脂肪に変わります。アミノ酸も解糖系にのり、エネルギーになります。非常に変換効率が高いので、多少栄養素がアンバランスになっても、なんとかやりくりできるわけですが、ビタミンやミネラルはそうはいきません。ビタミンAがビタミンCに変わることはないし、カルシウムが鉄分に変換されることもありません。つまり、ひとつひとつの栄養素を十分に補っていかなければならないわけです。

それにビタミン・ミネラルは、光、熱、水に弱いので、食事から摂取するのもなかなか難しい。また先ほど豆腐の例でも申しあげたように、現代食は、美味しい部分、食べやすいところを選んで食べる傾向が強いため、ビタミンやミネラルが摂りにくい方向に進んでいます。さらに栽培方法の変化などで、野菜に含まれるビタミン・ミネラルの量も、ずいぶん減っているといわれています。このような状況を考えると、体と心の栄養として不可欠なビタミンとミネラルを確実に摂取し、体の働きを補完してくれるのは、マルチビタミンが最適といえるでしょうね。

佐藤 務(さとう・つとむ)先生

稲毛病院
整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科・在宅医療科・健康支援科部長

佐藤 務(さとう・つとむ)先生

専門は整形外科・リハビリだが、救急、在宅医療、産業医もこなす。予防の医療化を実現するため健康支援科を設置し総合医療を実践している。サプリメントの摂取指導外来であるビタミン外来は今年で22年目。メディア出演や講演も精力的に行なっている。近著に、臨床から得られた精神代謝の啓蒙書である「代謝革命」(講談社+α新書)と「心と体を強くする! サプリメント活用法」(日東書院)がある。著書多数。趣味は、家庭菜園とロードバイク。