目の健康を保ってくっきりな毎日を!

監修:原 英彰 先生(岐阜薬科大学副学長・薬効解析学研究室教授・薬学博士)

加齢や老化による視力の低下に加え、IT機器の急速な普及で目の健康が脅かされています。
携帯メールやらインターネットの普及により、どんどん便利になっていく一方で、長時間ディスプレイを見続けることなどによる、目の疾病の増加が社会問題となってきています。
いつまでも若々しく健康で生きるためには、目の健康が基本です。
そこで今回は、目の健康を守るための最新の情報を、岐阜薬科大学の原英彰先生にお聞きしました。

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目の栄養成分「クロセチン」に注目

最近目に良い成分として、「クロセチン」という名前をよく聞きますが、どのような効果があるのでしょう。

 クロセチンについては、このところ学会でも論文が多数発表されるなど、目の栄養成分として、最近特に脚光を浴びてきていますね。

色々な効能が確認されつつありますが、なかでも最も注目されているのが、老眼による眼精疲労の緩和でしょうか。眼精疲労になると、目のピント調節がうまくいかず、ともすれば目がかすむ、視力が落ちる、目が痛むなどの症状が現れます。長時間続くと、肩こりや頭痛、吐き気、食欲不振など、体全体に悪影響を及ぼすこともあります。

眼精疲労は、どのような時に起こるのでしょう。

 別図の「目の構造」をみていただくとわかりやすいですが、簡単にいいますと、人間が目で像をとらえているのは、水晶体を通して目の奥の網膜で像を結び、外から入ってきた光信号を電気信号に変えて脳に伝え、初めて像だと認識しているわけです。水晶体をカメラのレンズに例えるなら、網膜はフィルムの役割を果たしています。

若いころの水晶体は弾力性に富んでいて、遠くを見たり近くを見たり、自由にピントを合わせることができるのですが、加齢により水晶体の弾力性が失われてくると、ピントを合わせる機能が低下して、近くの文字が見えにくくなります。これが老眼という現象ですね。

水晶体は、毛様体筋という筋肉に支えられていて、その収縮によってピントを合わせているんですが、水晶体の機能が45歳前後で低下していくのに対して、毛様体筋は70歳になっても元気なままなんです。このずれが眼精疲労の原因になるわけです。

近くを見てピントが合わなければ、毛様体筋は一所懸命合わせようと緊張し、努力するんですが、水晶体は既に弾性が失われているので、なかなかピントを合わせることができない。この緊張状態がある程度長く続くと、眼精疲労が生じてしまうわけです。

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毛様体筋の疲れをほぐす

クロセチンはどのように働くのでしょう。

 眼精疲労を緩和するためには、疲労が蓄積した毛様体筋をケアすることが重要になります。この毛様体筋の疲労回復促進に役立つのがクロセチンなのです。クロセチンは強い抗酸化作用で、毛様体筋の血流改善や炎症の抑制に働きます。その結果、毛様体筋がほぐれ、眼精疲労の回復につながっていくというメカニズムです。肩の凝りをほぐすような機能ですね。

実際にパソコン作業などでテストしてみると、クロセチンを摂取したグループは、作業後の目の疲労度の低減が顕著で、摂取していないグループとは、明らかに差が出る結果になっています。

もともとは植物に含まれる成分と聞きましたが。

 そうですね。クロセチンはクチナシの果実やサフランなどに含まれるカロテノイドという色素成分の一種で、日本でも昔から中華麺や栗きんとん、沢庵などの食品を染める着色料としてよく知られていました。本来、果物や野菜などの表面にある色素には、酸化ストレスから実を守る働きがあるんです。

それにクロセチンは、カロテノイドの中でも比較的分子量が小さくて、水にも油にもなじむことから、他のカロテノイドと比べても体内への吸収が早いのです。それだけ効果も期待しやすいわけです。

またクロセチンは、目の炎症を緩和したり、ブルーライトなどの光障害から網膜を保護したりする作用なども報告されていますから、眼精疲労に限らず、緑内障や白内障、加齢黄斑変性症などの予防などにも期待できますね。

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ブルーライトに要注意

最近一般的に、パソコン作業や携帯電話などを操作することも多くなってきていますが、なにか特に注意することはありますか。

 そうですね。もうそういった機器類なしでは、生活が成り立たなくなってきていますからね。でもパソコンやスマートフォンの画面から出ているブルーライトには、注意が必要ですね。380から500ナノメートルぐらいの短い波長で、エネルギーの強い光なんですが、私たちの体に良い働きも、悪い働きも持っています。

良い作用としては、ブルーライトは、体内リズムを調節する働きを持っていて、健康を維持するうえで、重要な役割を果たしています。ブルーライトは太陽光にも含まれていて、朝日を浴びて目覚めるとすっきりしますよね。あれはブルーライトの覚醒作用といわれる良い働きなんです。

一方悪い作用としては、例えばブルーライトを浴び続けると、網膜の中心部にあり、明暗や色を感知する黄斑が障害され、視力低下や失明を引き起こす「加齢黄斑変性」の原因となる可能性があります。視力が徐々に低下していく萎縮型加齢黄斑変性には、現在治療薬がありません。とても怖い病気の一つですね。

パソコンやスマホの画面を見続けるのも、目にはよくありませんね。

 もちろんそうです。ブルーライトは、目に見える光の中で最も波長が短いため、他の光よりも四方八方に散らばりやすく、ピントを合わせるために目の筋肉や脳は酷使されます。その結果、目の疲れ、肩や首のコリなど、様々な症状につながりやすいんです。

少しの時間であれば、すぐにそういった症状が出るというものではありませんが、くれぐれも長時間凝視したりしないように気をつけましょう。特に最近のお子さんは、スマホやテレビゲームに夢中になって、ついつい長い時間画面を見続けてしまうことが多いので、注意が必要ですね。

電子機器と上手にお付き合い

最近、ドライアイなどの症状も話題になっていますが。

 そうですね。スマートフォンやゲームなどの画面を夢中になって見続けていると、知らず知らずのうちに瞬きが少なくなって、目が乾燥するドライアイという症状に悩まされることもあります。また、就寝前にスマートフォンに熱中して十分な睡眠がとれず、日中の眠気や睡眠不足につながる恐れもあります。

目のことだけを考えると、スマホやゲームは一切しない方がいい…といってもそういった機器類は、今や私たちの生活に深く入り込んでいて、今さら排除することはできませんよね。なんといっても最近の電子機器類は便利ですし、楽しいですからね。要は上手に付き合っていくことです。

例えば、1時間おきに必ず10分程度の休憩をするなど、目を適宜休めながら電子機器を使用する。また最近では、先ほど申しあげた要注意のブルーライトをカットできるメガネレンズや、スマホなどにもブルーライトカット機能付きの液晶保護フィルムなども登場していますので、そういうツール類を上手に使うのも、目を守る手段のひとつですね。

目を酷使したなと思ったら、目を閉じて温めたおしぼりや逆に冷たいおしぼりを、まぶたの上に載せて休憩すると、目の周りの血行が促進されて、すっきりしますよ。

目に良い食べ物を摂る

日常生活で、気を付けておくことはありますか。

 目の健康のことを考えると、できるだけ抗酸化作用のあるビタミンやミネラルなど、天然成分を含むものを食べるよう心がけること。具体的には、にんじんやホウレン草などの、色の濃い緑黄色野菜の適度な摂取がおすすめですね。先ほども申しあげましたが、食物の色素の多くは、抗酸化力を持つ物質からなっていますからね。

また、日々の食事だけでは難しいという場合は、サプリメントなどを上手に利用するのもおすすめです。

例えば、先ほど申しあげましたクロセチンもそうですが、マリーゴールドなどの黄色い花の花弁に含まれる色素成分で、カロテノイドの一種であるルテインなども、中高年期の目の健康には重要な成分で、活性酸素による黄斑へのダメージを減少させる働きなどが知られていますので、サプリメントなどで上手に活用されるといいでしょうね。

要は、目はとてもデリケートな器官だということを十分認識し、疲労を蓄積させないようにすることが大切ですね。

今日は、とても貴重なお話を、ありがとうございました。

原 英彰(はら・ひであき)先生

岐阜薬科大学副学長・
薬効解析学研究室教授・薬学博士

原 英彰(はら・ひであき)先生

1958年、福岡県生まれ。岐阜薬科大学卒。大学卒業後、製薬企業の研究所で抗片頭痛薬、脳卒中治療薬、抗緑内障薬などの新薬の開発に従事。東北大学医学部神経内科、ハーバード大学医学部で学ぶ。専門は幅広く、脳や目の病気の解明とその治療薬の研究、健康食品の研究などを行っている。著書に「前向き脳でエンジョイ・エイジング」「なにはともあれ元気が一番」などがある。